こんにちは、三輪あや子です
大切な家族が亡くなった時、昔なら迷わず先祖代々のお墓に埋葬していましたが、今は供養の形もさまざまです。
お墓のない方や、お墓があっても別の方法を望まれる方もいます。
そして、火葬場から骨壺を抱えて帰宅した後に、供養方法で意見が割れて親族間でもめるケースも実は少なくありません。
その中で、注目されている供養の一つに「手元供養」があります。
今回は、都市部を中心に広がりをみせる「手元供養」について解説していきます。
手元供養とは?共に歩む癒やしの供養
手元供養とは、遺骨のすべて、もしくは一部を自宅に安置して祀ることを言います。
言うなれば、自宅の中に専用墓所を持つような感覚ですね。
遠くにあるお墓にお参りするのとは違って、手元供養では快適な室内に遺骨を安置できる安心感が保てます。
それに加え、亡き人の存在を近くに感じることで、ふとした時の喪失感を多少なりともやわらげてくれるのも、手元供養の大きなメリットです。
日常の中で何気なく話しかけたり、ぐちを言ってみたり、おいしいお菓子やお酒を分かち合いながら、少しずつその死を受け入れていくのを、故人がすぐそばで見守ってくれている、と感じられることが手元供養の癒やし効果です。
手元供養には多種多様な容器があり、ペンダント型から小さな骨壺タイプまで、形も素材もいろいろです。
ある程度、部屋の雰囲気にマッチした容器を選べば、来客があっても特に気にならないほど、手元供養の容器デザインは進化しています。
専用のスペースを求める方には、マンション住まいにも適したスタイリッシュなデザインのミニ仏壇などもあるので、それぞれに合った形で供養できるのも手元供養の特徴です。
【手元供養の特徴】
- 故人を身近に感じられる
- 強い悲しみ・喪失感をやわらげる
- 手元にあることの安心感がある
- こまめに世話ができる
- 自分たちの感性にあった供養品を選べる
手元供養をするデメリットとは?
手元供養を考える時には、デメリットも考慮しておきましょう。
手元供養は新しい供養のやり方であるため、他の親族などから厳しい反応を受ける可能性もあります。
特に手元供養はお墓の管理問題にもつながるので、親族間で関係がこじれることのないようあらかじめ話し合いや説得など、理解を求める根回しが必要です。
仏教の考えでは、手元供養では「成仏できずに迷う」とする宗派もあります。
その場合、お坊さんを招いて法要を営む際に問題になることもあるので、長年にわたる寺とのお付き合いがある方は慎重に考えることも必要です。
事前にお寺に相談してみることも一つの手です。
きちんと「なぜ、そうしたいか」を話すことで、理解を示して協力してくれるお坊さんもいらっしゃいますよ
- 故人の兄弟姉妹との関係がこじれる可能性
- 親戚筋との関係がこじれる可能性
- 宗教的な理由から全否定される可能性
- お墓の管理問題による感情および金銭トラブル
- 菩提寺との関係のこじれ
- これまでどおりの法要が拒まれる可能性
これから手元供養が増えていく!?その理由とは?
手元供養への関心が都市部を中心に高まっているのは、ベースには核家族化・少子化によるお墓の管理問題があるのですが、直接的には、これまでお墓のお世話をしていた世代が高齢化し、思うようにお墓参りができなくなった、ということがあります。
それを見越して、両親や連れ合いが亡くなったのをきっかけに、手元で供養するスタイルに切り替える方々が増えてきています。
- ✓ お墓のない方
- ✓ お墓を探している最中の方
- ✓ 体力的にお墓参りが難しくなった方(高齢など)
- ✓ 故人と共にありたい方
- ✓ 故人の遺骨を土の中(墓)に置きたくない方
- ✓ 信念に基づいて手元で供養したい方
- ✓ 墓じまいした方
- ✓ お寺とのかかわりがない方
- ✓ 一時的措置として(一番いい供養の形をゆっくりと考えたい方)
手元供養をするための手続きとは?
手元供養を行うにあたって特別な手続きは必要ありません。
火葬場から戻った遺骨を、そのまま自宅に保管することに問題はなく、役所に許可をもらう必要も、何らかの書類提出を求められることもありません。
ただし、その遺骨を墓地以外の場所、たとえ所有地の中であっても勝手に埋葬することは違法行為(墓埋法違反)なので、注意してください。
残った遺骨をその後どうするかについては、後ほど述べます
手元供養のやり方とは?
手元供養には決まった飾り方や作法・手順などはありません。
それぞれのやり方で供養すればいいのですが、高齢の方はこれまでどおり仏式の作法で供養される方が多いようです。
【仏式流】のやり方
写真・遺骨・位牌・燈火・おりん・線香立てなどを並べます。
炊きたてのごはんとお茶か水を供えて、数珠を手に掛け、線香をあげ、お経を唱えます(宗派の作法にのっとって行うか、略式でできる範囲で行う)。
【その他・自己流】のやり方
キリスト教や無宗教の例を葬儀社からアドバイスされ、それを参考にしている方が多いようです。
写真・遺骨・お花などを供え、位牌がある場合はいっしょに並べます。
それ以外にも故人の好物や、大事にしていた物などがあれば、いっしょに飾るのもOKです。
位牌ですが、インテリアになじむようなデザインにしたい場合、四十九日後に本位牌に作り直すタイミングでガラス製などにすると、美しいですよ。
【位牌についてポイント】
位牌を家に置きたくない場合
最初から作らないことが大切です(位牌があっても、葬儀が終わるまでに不要だと伝えれば棺の中に入れて荼毘にふすことも可能)。
すでに位牌が家にある場合
僧侶に相談して御炊き上げしてもらいましょう。
一度作った位牌を処分するには、宗教的な手順と費用がかかります。
手元供養に必要なものとは?
手元供養を始めるためには、以下の準備が必要です。
- 手元に残す遺骨を決める
- 手元供養の容器を選ぶ
- 手元供養の置き場所を確保
この3つが整えば、手元供養の準備は完了です。
では、一つひとつ必要なものや、準備すべきことを詳しく見ていきましょう。
① 手元に残す遺骨を決める
手元供養の遺骨を、どのように残すのかを決めます。手順は次のとおりです。
1、まず手元に残す遺骨の量を決めます。
- 全骨(火葬場から持ち帰った遺骨をすべて残す)
- 分骨(一部を残す)こちらが多数派
手元供養では分骨するのが通常ですが、全部残すのも自由です。
2、次に、遺骨を形あるまま残すか、遺灰(粉骨化)にして残すかを決める
- 遺骨のまま(骨の形状あり)
- 遺灰にする(粉状にする)
遺骨を遺灰にするには、自分ですることも可能ですが、散骨業者などに依頼するといいでしょう。
比較的安価できれいなパウダー状にしてもらえます。
これを粉骨加工といいます。
遺灰(粉骨)にして残すメリットは、容器に入れやすくなることと、(業者加工の場合)遺骨から不純物などが取り除かれるため、衛生面でも安心なことです。
手元供養で分骨する場合、どこの骨を残せばいい?
手元供養の分骨で「どこの骨がいい」「どこの骨を残すべき」ということはありませんが、喉仏などの(仏教において)意味ある部位を中心に残すのもいいでしょう。
喉仏は本当に粒のような小さな骨ですが、細工をしているわけでもないのに座して合掌する仏様のような姿をしています。
火葬場の職員さんがきちんと見つけて、説明してくれるので、見失うことはないですよ
一つの案として、この3~4粒の小さな骨は形あるまま残し、残りを遺灰にして手元供養の容器に納めるというやり方もあります。
小さな骨壺に納める本骨のみを残し、その中の喉仏のみ形あるまま、それ以外を遺灰にして手元供養する(容器のサイズによっては、遺灰にした中からさらに少量を残すのもあり)
② 手元供養の容器を選ぶ
遺骨を納める容器を選びます。
容器選びの基準は以下を参考にしてください。
- 遺骨が納まる容器
- 居住空間にマッチしたデザインのもの
- 生前の故人の感性にあったデザイン
- 遺族の感性で選ぶ
今はいろいろな形の容器が販売されているので、それぞれの好みに合わせて選べばいいと思います。
わたしの知人は、まるでオブジェのような芸術的なデザインのものを選んでいました
いまだ供養方法を決めかねている方などは、当面は火葬場から戻ってきた骨箱の状態でも構いません(場所は取るし、いかにも骨箱なんですが・・・)。
お墓や自然葬(散骨)に決めた時には、骨箱から出して納骨すればいいですし、手元供養をしようと決めた時には、あらためて手元供養の容器を選べばいいと思います。
手元供養のアイテムいろいろ
どんなものがあるのか、少しご紹介いたします。
【ミニ骨壺】
分骨用の小さな骨壺です。
遺骨の一部を納めて、手元に置いておくことができます。
サイズ的には、どれも片手で持てる大きさなので、いっしょに行きたかった場所に旅行する際には、一緒に連れて行くことも可能です。
デザインも宗教的なものからスタイリッシュなもの、かわいいものやアート系のものまで、いろいろ選べます。
素材もガラス製・クリスタル製・金属製・木製など、一見して骨壺と気づかないものもあります。
⇒小さなお墓KOBO公式サイト入り口 『もっとかわいい遺骨の入れ物ってないのかな・・・』 『インテリアに馴染む手元供養品を探してるんだけど・・・』 手元供養のための …
【ペンダント型・アクセサリー型】
大切な人の遺骨の一部を、常にお守りのように身につけていたい方におすすめです。
ペンダント型や指輪型が多く、遺灰を内蔵できるデザインとなっています。
形はいろいろあり、ユニセックスなデザインのものなら、男性でも違和感なく身につけることができます。
【遺骨プレート型】
不純物を取り除いた遺骨で作成されたセラミックプレートです。
骨壺が必要なく、お部屋のインテリアにもすっきりとなじみます。
【遺骨ダイヤモンド・宝石】
遺骨を使って作成したダイヤモンドです。
まさに永遠の輝きとして、共にありたいと願う方におすすめです。
宝石加工に必要な遺骨量はだいたい100~500グラムで、出来上がるまでに、半年ほどの時間がかかります。
【ぬいぐるみ型】
ぬいぐるみの中に遺骨を納める容器が入っています。
幼くして亡くなった子どもやペットの手元供養として選ばれています。
手元供養の容器の種類や購入先などについては、次の記事でも詳しく書いているので参考にしてください。
いろいろな考え方や、諸事情により手元供養を考える方が増えています。 今回は、手元供養の骨壺の選び方や購入先について解説していきます。 いずれ手元供養を …
③ 手元供養の置き場所を決める
手元供養の場所を作っておきましょう。
仏壇がなければ、棚の上などでも構いません。
無理のない範囲で故人を偲ぶスペースをつくり、遺影や花、好物などを飾ったり供えたりできれば、十分です。
逆に、きちんと供養の場所を整えたい方は、仏壇を用意するのもいいでしょう。
今は、狭いスペースでも置けるスリムタイプなどもあります。
【家具調仏壇】
現代のインテリア空間に置いても違和感のない、すっきりしたデザインの仏壇です。
家具と馴染むような色や材質で、都市部を中心にマンション住まいの方などに需要があります。
狭いスペースにも向いています。
【ミニ仏壇】
手元供養によく選ばれる、コンパクトサイズの小さな仏壇です。
棚の上の小さなスペースでも置けるので、置き場所に困ることはありません。
仏教的装飾のないものを選べば、信仰にかかわらず使用可能です。
手元供養した残りの遺骨はどうする?
手元供養のために分骨した場合、残りの遺骨をどう処分するかが問題です。
残りの遺骨については、別の形で供養するのが妥当です。
わたしの知人のケースでは、残りの遺骨はすべて海洋散骨していました。
各家の事情によってその後の対応は異なります
- 永代供養で合祀する
- 散骨する(海洋葬・樹木葬など)
- 故郷にある先祖代々の墓に入れる
この時、必要なのが「埋葬許可証」という書類です。
火葬場で受け取る書類で、おそらく骨箱の中に入れてもらっていると思います。
これがなければ、納骨も散骨も受け付けてもらえないので、なくさないようにしてくださいね。
「正しい手続きのもと火葬された遺骨です」ということを証明する書類です
紛失した場合は、早急に再発行手続きをしておきましょう。
再発行・・・ちょっと、めんどくさいけどナ。
紛失に気づいたら、即再発行しといたほうがいいゾ
手元供養をやめた後の分骨の行方は?
親か自分が始めた手元供養も、いずれ終える日が来ます。
おそらく、子か孫の代には遺骨を手放すことになるでしょう。
その時、どうすべきかも考えておいたほうがいいでしょう。
- 自然葬(海洋散骨・樹木葬など)
- 永代供養(個別・合祀など)
- 墓(子の代で家族墓を建てた時など)
- その他(寺の納骨堂など)
別の供養法に切り替える際、やはり必要なのが「埋葬許可証」もしくは「分骨証明書」です。
一度も「埋葬許可証」を使用していなければ、その書類を使います。
すでに提出済みで手元にない場合は「分骨証明書」を使います。
分骨証明書は分骨した遺骨に対して発行されるもので、埋葬許可証の代わりとなる書類です。
分骨証明書のもらい方については、次の記事を参考にしてください。
分骨とは、火葬後の遺骨を複数に分けて、それぞれ別の墓所にて供養することを言います。 分骨を納骨する際には、分骨証明書が必要になります。 今回は、分骨証 …
【ポイント】
- 手元供養以外では、手続きが必要です
- その手続きに必要な書類が「埋葬許可証」(または分骨証明書)です
- 分骨する場合は、火葬場で分骨証明書をもらっておくと安心です
「埋葬許可証」も「分骨証明書」も本来は、遺骨(分骨)を埋葬または収蔵する場合に必要な書類です。
散骨する場合は、埋葬にも収蔵にもあたらないので、これらの書類は必要ないものですが、「正式な手続きをもって火葬された焼骨である」ということと「誰の遺骨」かを確認するために提出を求める事業者がほとんどです。
まとめ
時代が変わり、生活環境や家族形態が変われば、亡くなった人の供養のやり方なども変化するのは、ごく自然なことだと思います。
その一つが、都市部を中心に広まりを見せている手元供養です。
手元供養に特別な手続きなどは必要ありません。
自分で準備をすればいいだけです。
【手元供養に必要なもの】
- 手元に置く遺骨
- 遺骨を納める容器
- 手元供養の場所
手元供養の準備が整えば、あとは宗教的な考えにそった祀り方をしてもいいですし、逆に節目ごとの追善供養など行わず、時々好物などを供えるだけでもOKです。
いっそ何もせず「いつもそこにいる」存在として、すっかり部屋になじんでいる方(故人)もいらっしゃいます。
すぐそばに亡き人を感じながら、思い思いの形で供養できるのが手元供養の良さかもしれませんね。
自然と笑顔がこぼれるようになるまで、いっしょに見守ってくれていますよ。
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