こんにちは、三輪あや子です
大好きなおばあちゃん、おじいちゃんが亡くなったとき、「もっと会っていればよかった」「もっと顔を合わせて話をすればよかった」と棺を前にして、悔やむ方は少なくありません。
そんなとき、司会の立場から「お手紙、書いてみませんか?」と提案することがあります。
「何かしてあげたかった」と心残りに感じている方には、うってつけのアイデアのようで、非常に喜ばれます。
そこで今回は、孫が読む弔辞のポイントとして、
- 孫の弔辞の書き方
- 孫が書く弔辞の文章スタイル
- 親族弔辞で注意すべき忌み言葉
以上の3点を中心に、短時間で弔辞を書き上げる方法も、かんたんにご紹介しておきたいと思います。
ここでご紹介するのは、「孫が読む弔辞」スタイルの実践的な例です。
正式な弔辞スタイルとは異なりますが、こういう形もあるんだとして、参考にしてください。
弔辞とは誰が読むもの?
弔辞は本来、親族以外の方が読むものです。
生前、故人と親しかった友人や、お世話になった方などが、今生の別れを惜しみつつ、功績をたたえたり、共に過ごした時間を懐かしみ、感謝の気持ちを文章にしたため捧げるのが、弔辞です。
なので、通常は親族が行うものではありません。
ところが、最近は家族葬を選ぶ方が増えて、お葬式もプライベート化してきました。
すると、お葬式そのものも形式は維持しつつ、内容はある程度、自由にアレンジする風潮が現われました。
日本人って伝統好きでもありながら、新しもの好きでもありますもんね
頭かたいんだか、やわらかいんだか・・・よくわかんねえ民族だもんな
その変化の一つが、親族からの弔辞です。
親族からの弔辞の中でも、一番多いのが孫からの弔辞です。
その次に、喪主以外の娘や息子からの弔辞です。
書いた文章を実際に読むか読まないかは別として、とりあえず手紙を書く方はとても増えています。
自分で読まない場合は、お花といっしょに棺に納めます
司会者が代わりに読んだりもするよな
自分で読むのが一番なんだけどね
この親族が書いた弔辞をアナウンス紹介する際は、わたしは「弔辞」ではなく「お別れの言葉」という言い方に替えて、多少、区別するようにしています。
【言い方バリエーション】
- お別れの言葉
- お別れの手紙
- お別れの挨拶
- 追悼のことば
その場に応じて、もっともふさわしい言い方を選ぶようにしています。
孫の弔辞はいつ頼まれる?よくある無茶ぶりタイミング
孫に弔辞を読むように言い渡されるのは、どのタイミングでしょうか。
多くは通夜の席で、親や親戚筋などから突然、言い渡されるケースが多いようです。
しかも、「お前、明日、弔辞読め」と、ほとんど決定事項として告げられます。
私が司会を担当したお葬儀でも、遺族との打ち合わせの最中に孫が呼び寄せられ、有無を言わせず紙とペンを渡されているのを、何度も見かけました。
通夜式を行わない地域では、それこそお葬式当日に「弔辞しろ」と命じられていますね。
通夜しない地域ってあるの?
あるんだよー。いわゆる一日葬なんだけどね。それが地域全体の慣習になってるの
んで、いきなり弔辞を頼まれる、と
わたしが普段見ている風景は、こんな感じです。
開式前の遺族との打ち合わせで、喪主さまに弔辞の提案をすると、「せやな! それええな!」と、さっそく控え室にとんで行き、スマホをいじる孫やひ孫に声をかけられます。
喪主「あのな、おじいちゃんに弔辞読んだってくれへんか?」
孫達「え、ええー!? 今から!? マジで!?」
喪主「大丈夫や。まだ1時間ある。書いたってくれ」
というやり取りは珍しくありませんでした。
もっとも、司会(わたし)が提案するからそうなるんですけどね・・・
ですが、そのように弔辞を依頼されるということは、そのお孫さんは、周囲の大人から見て、故人が特に目を掛けていたとか、気に掛けていた証です。
もし弔辞を頼まれたなら、どんな無茶ぶりであろうと、ぜひ快く引き受けてください。
弔辞があると、お葬式がすっごく良いものになります
孫の弔辞って、何をどう書けばいい?
突然の弔辞依頼に、孫たちはどんな内容の手紙を書いているのでしょうか?
文章を書き慣れている人ばかりなのでしょうか?
そんなことないですよ。
わたしの経験上、ほとんどのお孫さんは親族から「弔辞を読め」と言われた瞬間、息をのんでいます。
しばらく硬直していますが、その間も周囲からの追い打ちのような声援にはげまされ、退路を断たれ、怒濤の勢いに飲まれて「わ、わかった」と了承しています。
かわいそうに・・・
その後は、司会者に向き直り、「弔辞って、書いたことないんですけど・・・どうやって書けばいいですかね?」と、心底困った顔で聞いてこられます。
その時、わたしはこのように返答しています。
【司会としてのアドバイス】
『まだ小さな子どもだった頃から今日まで、(故人と)一緒に過ごしたことや話したことなど思い出しながら、(故人に)話しかけるように、素直に感謝の気持ちを手紙に書けばいいと思いますよ』
実際は、もっとくだけた言い方していますけどね
それを聞いてしばらく「ふ~ん」と考えた後、事務所で紙とペンをもらい、控え室で思い思いに手紙を書き始めます。
決して、作文が得意な様子もなく、まして手紙など書いたこともないような雰囲気の方まで、例外なく開式までには「お別れの手紙」を完成させています。
中には、ちょっとふてくされて「なんでオレが・・・くそっ」と、ぶつぶつ文句をつぶやいている鼻ピアスや金髪・銀髪の男子高校生たちもいますが、やはり紙とペンをつかんで控え室の隅っこに陣取って手紙を書いています。
これが、女の子だと二つ返事で引き受けるんですよね
それを見た親戚の小さな子どもたちが、同じように紙をせがみ、金髪鼻ピアスなお兄ちゃんのそばで、テーブルにかじりつくようにして、いっしょに「お手紙」を書いている姿は、とても微笑ましかったです。
皆、自分らしい言葉と、言い回し、自由な形で文章をつづっています。
そうやって書き上げた「お別れの言葉」を、どのお孫さんたちも堂々と、時には声をふるわせながらも、亡くなった祖父母の遺影を見つめながら、読み上げていらっしゃいます。
孫の弔辞の書き方(文章構成)とポイントとは?
では、参考までに弔辞の書き方について、ポイントを詳しく見ていきましょう。
弔辞の形式と内容
孫(親族)からの弔辞は、あまり「弔辞の形式」というものを意識しすぎないほうが、うまく書けます。
小さいころの思い出や、普段言えなかった「ありがとう」の気持ちを素直に書けば、それがそのまま立派な弔辞になります。
かしこまった言葉でなく、祖父母に話しかけるような文章でもかまいません。
周囲に聞かせるための内容ではなく、自分と亡くなった祖父母との対話です。
立派な文章でなくていいのです。
例えば、目の前におじいちゃんやおばあちゃんがいるとイメージしてください。
祖父母の目の前でおもむろに手紙を取り出し、「あのね、普段言えなかった気持ちを手紙に書いてきたんだ。今から読むから、ちょっと聞いててね」と言って、読み始めるという感覚でOKです。
そういう手紙が、いいのです
書き始めはなかなか筆が進まないかもしれませんが、ひとたび書く道筋が決まると、するすると文章が浮かんできます。
【孫の弔辞の書き方ポイント】
- 言葉遣いなどは自由
- 方言入りの話し言葉OK
- 立派な文章である必要はなし
適切な弔辞の長さは?
弔辞の長さは、式時間や弔辞を読む人数で変わってきますが、
1人につき3分以内が適切とされています。
原稿用紙で3枚以内、文字数になおすと800~1200字が理想的な長さです。
弔辞を読む年齢が12歳以上の場合、あまりに短すぎるのも、ふさわしくありません。
文章を書いていると、次から次へといろんなことが思い出されて、ついつい長くなる傾向が見られますが、適切な長さ・文章量を心がけましょう。
持ち時間については、司会者に確認しておくといいと思います。
書き上げた後、文章が長すぎると感じた場合は、エピソードの優先順位を付けて、一つか二つを残して、削除しましょう。
短い時間なので、少ない方が印象深く、また情景も浮かびやすい効果があります。
どうしても捨てきれない場合は、エピソードを一つの文章の中に、箇条書きのように並べてしまう方法もあります。
【参考例文】
『~~ほかにも、おばあちゃんと行った花火大会、近所の神社のお祭り、お餅つき、どれも本当に楽しくて、家に帰らないといけない日には、いつも泣きわめいて困らせてしまったよね。~~』
文章構成(書き出し~結び)について
孫からの弔辞は自由形式でよいのですが、一応の書き方ガイドとして、文章構成らしきものをご紹介しておきます。
1、はじめの言葉(出だしの言葉)
呼びかけの言葉で始める。
- おじいちゃんへ
- おじいちゃんへ、お別れの言葉
- おじいちゃんへ、お別れの言葉をささげます
祖父母への呼びかけは、普段使っている言葉でも、ちょっと改まった感じでも、かまいません。
「おじいちゃん」「△△おじいちゃん」「じいじ」「おじいさま」「おじいちゃま」など、自由です。
この呼びかけに関しては、30代以上の孫であっても、普段どおりの呼びかけをしても、問題ありません。
2、訃報を知った時の、自分の気持ちを伝える
祖父母が亡くなったことを知った時の気持ちを素直に書きます。
【参考例文】
『おじいちゃん、オレ、今まだ信じられない気持ちでいます。
きのう学校から帰ってすぐ、お母さんから「おじいちゃん、亡くなったよ」と聞かされたとき、ウソだと思いました。
急に心臓がドキドキしてきて、オレ、笑って「ウソだろ?何ふざけたこと言うてんの?」と言ったけど、やっぱりウソなんかじゃなかったんだね。』
3、祖父母との思い出を書く
思い出せる中から、どれか一つ印象に残っていることを中心に、その時の心情や、今感じていることなどを書く。
4、感謝の言葉を伝える
今、この場にいる自分から、亡き祖父母へ感謝の気持ちを書いて伝える
『おじいちゃん、今まで本当にありがとう。』
5、祖父母への最後のメッセージ(結び)
もう会うことのできない祖父母へ、最後の語りかけ(願いや、メッセージなど)。
『これからも、オレたちのこと見守っていてください』
【参考例文】
『虹の橋のたもとでサスケが待ってると思うので、またいっぱい遊んでやってね。
おじいちゃん、どうぞ安らかにお眠りください』
6、日付と名前(最後)
最後に、葬儀の日付と自分の名前で締めくくります。
『令和△年◇月◇日 安土桃太郎』
※和暦を使用します
孫代表として弔辞を読む場合は、『孫代表 安土桃太郎』としてもOKです。
孫の弔辞と忌み言葉(使わない方がいい言葉)について
孫からの弔辞では、忌み言葉もふくめて、使用する言葉にあまり神経質にならなくてもいいと思います。
たとえば、「天国」という言葉を皆さん、よく使われます。
【参考例文】
『おばあちゃん、これからも僕たちのこと、ずっとずっと天国から見守っていてください』
『お星様になったじいじ、わたし達のこと、これからもずっとお空の上から見ていてね』
このように、「天国」という言葉は当たり前のように使われ、聞いている側も何の違和感も覚えませんが、本来「天国」「空の上」などはキリスト教で用いられる言葉です。
仏教では「極楽浄土」「西方浄土」「お浄土」となるはずですが、これらの単語は、ほとんど使われることはありません。
宗教関係の方が耳にすれば注意したくなるのでしょうが、わたしは、あえて指摘しません。
子どもの頃から、亡くなった大切な人は「天国」「お空の上」「お星さま」という言葉を使って、「あなたのこと見守ってくれてるんだよ」と、周囲の大人たちになぐさめられてきたのです。
宗教とはかけ離れた次元で、心がそう感じていて、それが大多数の人にとってストンと胸に納まる感覚なのです。
ましてや、親族の弔辞は、故人に対してのプライベートな側面が強く、宗教さえも入り込めない濃密な関係性が存在しています。
それゆえに、言葉は自由でかまわないと、わたしは考えます。
ただし、一般の方の弔辞では、「忌み言葉」とあわせて、宗教的用語にも十分に配慮が必要です。
親族でも成人の方、特に30代以上の方が書く文章は、案外「忌み」とされる言葉が入り込みやすいので、気がつく範囲で構わないので、できるだけ別の言葉に言い換えるようにしてください。
親族の間でならあまり問題にもならないかもしれませんが、今後の社交のためにも、普段から意識しておくに越したことはありません。
誰かに弔辞の内容を添削してもらう
書き上げた弔辞は誰かに見てもらうことをおすすめします。
年配の方に見てもらうといいですよ
特に高校生以下のお孫さんの場合は、言い回しや慣用句の使い方に間違いがないかなど、チェックしてもらうようにしましょう。
特に、忌み言葉の中でも、あからさまな表現は別の言葉に言い換えるよう、アドバイスしてあげてください。
「死んだ日」⇒「亡くなった日」
「生きてた頃」⇒「元気だった頃」
ただし、忌み言葉にとらわれすぎると、かえって不自然な文章になってしまうこともあります。
そのため、親族弔辞の場合は、そこまで厳密になる必要はないのですが、上記の2つについては、気がつけば訂正するようにしてください。
中には、その言葉が心に突き刺さる人もいるかもしんないし
また、同じ孫でも、内孫・外孫という立場の違い、そのほか、遺族との関係性によっては、完全に忌み言葉をクリアしておいたほうがいい場合もあります。
そのへんは、周囲の大人が気を配ってあげてください。
とはいえ、孫・親族の弔辞は「身内」のことなので、常識的な言葉と内容なら、何の問題もありません。
かなりぶっきらぼうな内容でも、喪主一家には喜ばれてましたよ
みんな、うれしそうにしてるよな
どうしても弔辞を書けないときの対処法
葬儀場で親世代から突然、弔辞を頼まれ、困った場合は、いっそのこと、ほかの孫たちと共同で一つの弔辞を書き上げる、という方法もあります。
孫全員で思い出を出し合って、共通部分を中心に、文章を書くのが得意なだれかにまとめてもらいます。
それを孫の連名で仕上げます。
本文のあとに読み上げる連名部分は、同じ姓ごとにまとめて記すといいでしょう。
例)田中A子、B太、C朗、山田D夫、E子・・・・・・
なお(故人は知っていることなので)それぞれの姓は省いて、下の名前だけでもかまいません。
代筆サービスなどを利用をする
仮に、弔辞をささげたい気持ちは強いのに、どうしても書き上げることが無理な場合は、オンラインで利用できる、弔辞代筆サービスというものもあります。
わたしが司会を担当した喪家の中にも、代筆サービスで作成した弔辞を「感謝の言葉を孫全員でささげます」として、読み上げているケースもありました。
聞けば、供花の代わりだそうです。
お花を注文する代わりに、「孫一同」として、みんなでお金を出し合って、プロに弔辞を依頼したんだそうです。
そのお葬式では式時間に余裕があったため、ほんの少しアドバイスをさせてもらいました。
弔辞を読むために並んだ全員が、最後に一人一言ずつ、故人の遺影写真に向かって、自分の言葉で気持ちを伝える、というスタイルです。
その結果、とても心温まるお葬式となりました。
こうした代筆サービスを利用するには、前もってお葬式が予想される場合や、通夜の時点で依頼する必要がありますが、多少なりとも時間的猶予があれば、考えてみるのもいいと思います。
若い方が多いお葬式は、いろんなサービスを知っていて、うまく活用していますね
オンライン取材 最短24時間以内にお届け! >>葬儀挨拶代筆店公式サイト ある日、 親族や友人知人の訃報とともに、告別式での弔辞をお願いされたら? だれもが、一瞬、息を詰めると思 …
孫の連名弔辞の読み方と立ち方
読み方としては通常どおり、弔辞本文を読み終わったあと、連名部分を読み、次に日付を読み上げ、最後に孫代表として、自分(読み手)名前をフルネームで言って終わります。
一般的には、読み手が一人でマイクの前に立ちますが、連名の孫全員で並んでもOKです。
その場合、読み手である孫代表がマイクの位置に立ち、他の孫たちは読み手の片側か両側に並んで立ちます。
これは、孫が多い親族で、わりと人気の弔辞スタイルです
みんなで前に出るから安心感もあるんだろな。
なぜかひ孫も並んでご満悦だったり
並び方などは、式場の形やサイズにもよるので、司会者に相談してください。
まとめ
今回は、祖父母のお葬式で読む、孫の弔辞についてご紹介しました。
孫の弔辞は形式張ったものではなく、どちらかというと亡くなった祖父母へあてた「最後の手紙」です。
好きなように書いてください。
一応の文章構成としては、
- 呼びかけの言葉
- 最初に訃報を知って驚いた気持ち
- 懐かしい思い出・記憶
- 「ありがとう」の総まとめの言葉
- 最後のお願い・メッセージ
- 日付・自分の名前
このような感じで書けばいいでしょう。
手紙形式だと、意外とスルスル文章が書けるようです。
実際の現場では皆さん、もっと自由な形で、あふれんばかりの追悼の気持ちを弔辞にたくし、それを読み上げられています。
文章も、書き言葉と話し言葉が入り交じって、とても豊かです。
上手に織り交ぜて、効果的に使っていますね
まるで祖父母の魂がくすくすと笑っているかのような、そんな、やわらかな空気が式場に生まれます。
親族、とくに孫からのお別れの手紙は、きっと亡くなった祖父母の宝物になるのだろうなと、見ていて常にそう感じます。
こんな形の「最後のプレゼント」も、いいかもしれませんね。
最近は省かれることが多い弔辞ですが、かしこまらないスタイルでならハードルも下がり、家族葬でも採り入れやすいと思います。
思い出深い葬儀となるよう、弔辞をうまく活用してみてください。
一般的な弔辞の読み方や作法については、こちらのページにまとめています。
身近な方の訃報はいつも突然です。 それに加えて、弔辞の依頼は 遺族から「もしもの時は・・・」とお願いされていない限り、唐突に頼まれるものです。 &nb …