こんにちは、三輪あや子です
最近、お墓以外の供養法として注目度が高まっている「散骨」ですが、トラブルがあるということを聞くと、ちょっと心配になってきます。
しかも、「散骨は違法じゃないの?」「いや、グレーだ」などと言われると、散骨への関心まで微妙にゆらぎそうで・・・。
そこで今回は、散骨の違法性と問題点、何が原因でトラブルに発展するのかなどを調べてみました。
散骨を前向きに検討していくためにも、確認しておきましょう。
散骨は違法ではないが、合法でもない!?
わたしにとっても散骨は気になる供養法なので、いろいろと調べていました。
結論からいいますと、日本国内で散骨を行うことは違法ではありません。
ただし、合法でもありません。
日本には散骨に関する法律がないため、違法にはならないものの「法律の規定がない=禁止じゃない=合法」という荒っぽい解釈は、今では通用しません。
古い出版物には、散骨に関して「合法」という言葉が使われていたりしますけどね
散骨に違法性がない、と見なされたワケとは?
散骨に関する法律がない(禁止されていない)なら、いったい何を根拠に「違法性はない」と言っているのでしょうか?
法律で禁止されてないなら何やってもいい、とはだれも考えませんよね。
実は、人が亡くなったときの遺体とその遺骨等の扱いについては、きちんと法律で定められています。
それが、『墓地・埋葬に関する法律(墓地埋葬法)』です。
散骨の違法性については、どうやらこの法律に当てはめて判断したもようです。
ただし、この墓地埋葬法というのは、「遺骨の埋葬は、墓地以外の場所で行ってはダメですよ」と定めているだけなのです。
そのため、「じゃあ埋葬しないのなら、これ関係なくない?」となったわけなんですね。
散骨は埋葬では・・・ない?
散骨は埋葬にはあたらない?
墓地埋葬法の「埋葬」とは「死体を土中に葬ることをいう」と明記されています。
ゆえに散骨は埋葬ではない。
したがって「散骨は埋葬には当たらない」ので、「この法律に違反しない」というロジックです。
法の抜け穴か!?
ただ、違法じゃないからといって、どこでも自由に散骨を行っていいわけではありません。
場合によっては法律違反で罰せられることもあるので、十分気をつける必要があります。
じゃあ、何に気をつければいいのか、見ていきましょう
散骨を行うときに注意したい問題点とは?
問題なく散骨を行うためには、次の問題点をクリアしなければなりません。
- 法的な問題点(墓地埋葬法に違反していないか?)
- モラル的な問題点(周辺住民とのトラブル)
特にモラル的な問題は非常にデリケートで、中には訴訟に発展するケースもあります。
散骨が違法となるケース(法的な問題点)
墓地埋葬法(墓埋法とも呼ぶ)に違反しない範囲での散骨は許容されますが、これに違反すれば罰則もあります。
散骨で違法行為となるのは、次の2つのケースです。
ケース① 遺骨を埋めてはいけない
遺骨を土に埋めたり、散骨した場所の上に土をかぶせてはいけません。
故人のたっての希望であったとしても、遺骨を埋めた時点で、罪に問われます。
たとえば、こういう散骨をすると違法です。
昔よく父といっしょに登った山の沢のそばにひときわ大きな桜の木がある。
登山に行くたびに家族でお弁当を食べた、思い出深い場所でもある。
先日亡くなった父の「散骨してほしい」という遺言に従って、桜の大木の根元に遺灰を埋めた。
※遺灰(粉状にした遺骨)
あ、ありがち・・・
埋めると、なぜ罪に問われるのでしょうか・・・?
【注意すべき法的問題】とは?
墓地埋葬法には、遺骨を埋める場合は、その土地の目的が「墓地」でなければならず、自分の土地であっても庭や田畑、(墓地に定めていない)山林に埋めてはいけない、と定められています。
墓地埋葬法第4条 「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない」
これに違反すると、刑法第二十四章「礼拝所及び墳墓に関する罪」によって罰せられます。
現在の墓地埋葬法では、埋葬と埋蔵は区別されています。
- 埋葬(土葬)
- 埋蔵(焼骨の墓地などへの納骨)
どちらも墓地内であれば、問題ありません。
ただ、この記事内では特に区別せず「埋葬」と言っています
どんな【罰則】が待っている!?
墓地でもない場所に勝手に遺骨を埋めたり、撒いたりすると死体損壊等罪(第百九十条)にあたり、三年以下の懲役に処せられます。
死体損壊等罪には、遺骨や遺髪などもふくまれているため、死体遺棄罪・死体損壊罪が適用されます。
つまり、状況や解釈次第で、遺骨を「撒く」ことは「遺棄(捨てた)」と見なされる可能性があります。
- 墓地以外の土地に遺骨を埋めない
- 散骨した後に土をかぶせない
ケース② 遺骨を骨の形状のまま撒いてはいけない
お墓に納めるのとは違って、散骨をする場合は遺骨を粉状になるまで砕かなくてはいけません。
これは、人に不快感や嫌悪感を与えないためと、撒いた遺骨が自然に還りやすくするための処理です。
サイズの目安としては、遺骨のすべてが米粒以下になるまで細かくします。
間違っても、骨の形のままや、適当なサイズに割った程度で撒いてはいけません。
遺骨は自分で砕くこともできますが、専門業者の粉骨サービスなどを利用すると、きれいなパウダー状に加工してもらえます。
- 病死した夫の希望で、何度も登った山の頂にある大きな楠の根元に、西陣織の袋に遺骨を納め、埋めた。
- 広々した太平洋への散骨が母の希望だった。フェリーに乗って太平洋を航行中、持って来ていた遺骨を、少しずつ海に撒いていった。
どっちも共感できてしまう・・・でも、ダメなんです
んで、これは?
どういうとこが問題になるんだ?
【注意すべき法的問題】とは?
散骨すること自体は禁止されていませんが、骨の形のままの遺骨を埋めたり、撒いたりすると「死体遺棄罪」に問われますので、十分に注意してください。
モラルの点でもアウトです。
どんな【罰則】が待っている!?
刑法第百九十条「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する」(死体損壊等)
- 骨の形のまま散骨してはダメ!
- 遺骨は必ず粉状にして散骨すること
散骨がトラブルになるケース(モラル的な問題点)
一方、モラルの面で問題となるものは数多くありますが、主に次の2点に注意してください。
こちらは、法的な問題ともからみますが、地域住民とのトラブルを避けるための留意点です。
好きな場所で勝手に散骨しない
散骨するにあたって、故人の希望する土地や、思い出深い地、風光明媚な観光地や絶景スポットなど、憧れの地を選びたくなりますが、下調べもせずに勝手に散骨を行おうとすると、周囲の人とトラブルに発展する可能性もあります。
当然、街中でビルの屋上などから撒くのもダメです。
また、こっそり土に埋めたりすると法律違反です。
今はSNSを通じて、地元の困りごとが一気に拡散され、大きな話題となり、それが巡り巡って風評被害をもたらす結果となり、訴訟問題に発展するケースも起こっています。
実際、モラルに反した散骨が野放図に行われることに頭を抱えた自治体が、条例で散骨を規制する動きも出てきています。
散骨を行う場合は、細心の注意を払ってルールやマナーを守る必要があります。
- 空からの広範囲への散骨(遺灰が風に流される)
- 周辺に民家がある場での散骨
- 所有者のいる山林
- 漁場・養殖場付近での散骨
- 観光ビジネスの資源となっている場所
- 海岸付近からの散骨
- 航路上の散骨(フェリーや遊覧船などの通り道はダメ)
- 周辺住民の反感・反対運動のある地
・・・ダメなところばっかだな
絶対にダメな場所もあるわよ
川や湖など水辺への散骨は絶対禁止
飲み水の水源となるべき場所、およびその周辺への散骨は絶対にしてはいけません。
- 河川・湖・滝・池・ため池・沼など
- 水源の上流およびその周辺の土地(雨水によって地下に溶け込む)
たとえ有害物質(六価クロム※)を取り除いた焼骨であっても、ダメです。
※六価クロムは高温の炉で火葬する際に、遺骨に付着する可能性のある有害物質です(骨壺に納めて自宅に置いておく分には、特に問題ありません)。
散骨は政府のお墨付きあり!?(日本で散骨が広まった背景)
ここまで見てきて、散骨にはモラルやルールでダメなことも多いことがわかりました。
そもそも墓地埋葬法の第4条がある時点で散骨は違法なのではないかと思うのですが、「遺骨を埋めなきゃ、セーフ!」な解釈によって、現在も問題なく散骨は行われています。
これは散骨する側が勝手な解釈を振りかざしているわけではなく、行政側の見解でもあるんですね。
行政側の大人な解釈と背景
今はお墓が当たり前ですが、日本でも昔はいろいろな葬送の形がありました。
江戸時代の中頃から檀家制度が敷かれ、市井の人々の間にも亡くなったあとはお墓に入ることが当たり前となっていきました。
それでも、まだ各地域での葬送の形は受け継がれていたのですが、1948年(昭和23年)に墓地埋葬法が制定されて以降は、刑法190条(死体遺棄罪)もあって、散骨は違法行為だと考えられるようになりました。
そんな中、1991年(平成3年)10月に、NPO法人「葬送の自由をすすめる会」が相模湾沖で散骨を行いました。
この会が散骨を初めて「自然葬」と呼んだそうですよ
この会が行った散骨について行政側は、新聞社の取材を通してこう述べています。
当時の法務省刑事局は、非公式ながら「遺骨の損壊、遺棄を禁じる刑法190条は社会習俗としての宗教的感情を保護する目的のもの」「葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題はない」との見解を示しました。
また当時の厚生省(現在の厚生労働省)も墓地埋葬法との関係について、この法律は「散骨のような葬送の方法については規定しておらず、法の対象外であり、禁じているわけではない」という立場を、新聞などのメディアの取材に対して表明しています。
こうした政府の見解がメディアを通して出されたことで、散骨は(一応の)お墨付きを得た形となって、現在に至っています。
散骨ビジネスと反対運動
散骨が注目されだした頃から、各地で散骨ビジネスが増加傾向にあります。
中には、これまで葬儀関連とは無関係だった会社や団体が、広大な敷地を急きょ樹木葬霊園としてビジネス展開をはかるケースも見受けられます。
周辺住民等の理解を得て始めた事業であれば問題ないのですが、そうでない場合、周りから悪感情を持たれ、将来的に閉鎖に追い込まれる可能性もあるので、要注意です。
こういった周辺住民との軋轢は、どちらかというと、海よりも陸地での散骨に多いように思えます。
海は意外と人の目があって、モラルに反する行為をやっていると、屈強な漁師さん達にものすっごい迫力で追い払われるみたいです
よそ者がウロウロしてたら、すぐわかるしな。どっちにしろ船出すし
樹木葬をはじめ陸での散骨を選ぶ際には、散骨業者が指定している散骨地周辺でトラブルが起こっていないかなど、ある程度、下調べをしておく必要が感じられました。
周辺に暮らす人々から忌々しく思われ、厳しい目を向けられている所に、大切な人を眠らせたくはありませんよね。
ましてや、トラブルの末に全部掘り返して、更地で閉鎖だなんて、あり得ませんから・・・。
まとめ
散骨は「政府のお墨付きあり」とはいいますが、これらは平成3年当時の非公式な見解であって、そもそも散骨などの自然葬を想定した法律がないがため、墓地埋葬法に抵触しない限りは黙認している、というのが実情です。
墓地埋葬法は、亡くなった方の、人としての尊厳を守るための法律であって、これに反する行為は許されません。
つまり、散骨は違法ではないけれど、やり方次第で処罰の対象ともなり得るグレーゾーンというのが、本当のところなのかもしれませんね。
【現時点での行政の見解】
「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」
今のところ、節度をもって行う散骨であれば問題ないようです。
また、そういう散骨業者を選んで、静かな祈りをささげ、自然に還る姿を見送ってください。
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