こんにちは、三輪あや子です。
できるだけ費用を抑えたお葬式がしたくて、市民葬(規格葬儀)を選ぶ方も増えています。
ところが、いざ終わってみると「意外と高くついた」と感じる方も多いようです。
なぜ、そんなことになってしまうのでしょうか?
そこで今回は、市民葬の実例を用いて、なぜ低価格のはずの市民葬が、高額に変化してしまうのかを検証していきたいと思います。
ここでは兵庫県神戸市の市民葬(規格葬儀)プランを参考に解説していきます。
市民葬と規格葬儀の違いとは?
市民葬も規格葬儀も呼び方が違うだけで、趣旨は同じです。
どちらも、自治体と地元の葬儀社が協力して同一規格の葬儀プランをつくり、住民に対して低価格で葬儀サービスを提供するものです。
同じ自治体に所属する指定葬儀社なら、どの会社に依頼しても、同じ葬儀プランが同一価格で提供されます。
あ~、だから規格葬儀なわけか
神戸市の市民葬(規格葬儀)の費用とは?
今回、参考にするのはバランスのとれた複数プランを持っている神戸市の市民葬です。
神戸市では市民葬ではなく、「規格葬儀」という呼び方しています。
神戸市の規格葬儀には3つのプランが用意されています。
【神戸市規格葬儀プラン】
あじさいプラン | 43万円 |
---|---|
ゆりプラン | 25万9,500円 |
かすみプラン | 19万6,800円 |
※表示価格は税込みです。
神戸市の規格葬儀では、この三つのプランから、自分に合ったものを選ぶようになっています。
ここで、多くの方が勘違いするのが、この金額でお葬式ができる、と思ってしまうことです。
できません
この葬儀プランの価格だけで、お葬式ができるわけではありません。
追加費用ってのが絶対にあるんだ
追加費用がどれくらいかかるかは、プランの内容と、そこに何を追加したか、で変わってきます。
神戸市の市民葬(規格葬儀)の最安プランの内容とは?
では、プランの内容をくわしく見ていきますが、ここで参考にするのは、もっとも安価な『かすみ』プランです。
『かすみ』プランの内容を調べてみると、次のようなものでした。
『かすみ草』プランの基本料金にふくまれているサービス
- (かすみプラン用)祭壇・棺・祭壇の生花
- 納棺・火葬料
- 骨壺(4寸以下)
- 諸手続き(火葬場予約など)
- 式場設営係(2名)・火葬場案内(1名)・収骨案内(1名)
あ、火葬料もふくまれてる
ホントだ。
他の自治体だと別料金ってとこも多いのにね
プランにふくまれているものについてイメージしやすいように、もう少し説明しておきますね。
- 【式場設営係とは】葬儀式場となる場所に幕を張ったり、祭壇などを設置・撤収する係のことです
- 【納棺係とは】故人を棺に納める役割の人のことです
- 【諸手続きとは】お役所関連の手続きの代行です
- 【火葬場案内とは】火葬場へ到着した遺族を案内し、手続きを行う係ですリストが入ります
- 【収骨案内とは】火葬場でお骨上げの案内やセッティングを行う係です
ここまで見てきて、わたしが気になったのは骨壺のサイズです。
サイズ? 骨壺にサイズってあるの?
一般的な骨壺のサイズは、こんな感じです。
【一般的な骨壺サイズ】
- 関西で通常使用されるのは6寸
- 関東で通常使用されるのは7寸
4寸の骨壺というのは分骨・手元供養用なので、片手で持てるサイズですね。
足の先から頭頂部まで、主要部位のお骨を集めて納めたいと思われる方には、4寸は小さすぎるため、骨壺のサイズ変更を頼まなくてはなりません(差額の支払いが生じます)。
火葬後に、散骨や永代供養を予定している場合は、4寸でも問題ありません。
このように、プランにふくまれているサービスでも、(骨壺一つとっても)自分に適切なものかを確認する必要があります。
以上が、プランの基本料金にセットされているサービスの内容です。
次は、何が不足しているのか、ですね
神戸市の市民葬(規格葬儀)で追加すべきサービスとは?
次は『かすみ』プランにふくまれていないサービスを見ておきましょう。
✓必ず追加すべきサービス
✓場合によって追加するサービス
この2種類をチェックしていきます。
ここからは、基本料金にふくまれていないサービスになります。
お葬式をするために必要な追加サービス
追加すべきサービスというのは、葬儀プランにはふくまれていないけれど、お葬式を行うために必ず必要となる部分です。
故人の搬送用寝台車・ドライアイス・雑費(消耗品など)・宗教用諸道具費・遺影・式場スタッフ人件費
サービスについて、かんたんに説明します。
遺体の搬送用寝台車
搬送用寝台車は亡くなった方を、自宅や病院などから式場まで移動するために必要なものです。
自宅で亡くなって、自宅でお葬式を行う場合は不要です。
移動距離や時間帯、建築物の状況にもよりますが、だいたい3万円前後です。
- 2~4万円/片道(10キロ未満)
ドライアイス
ドライアイスは、お葬式が終わるまでの間、故人の体を保護するために必要なものです。
季節や環境によりますが、だいたい2~3回、追加することになります。
- 1回分 8千~1万円
宗教用の道具類(祭具)
宗教用の道具類は、それぞれの宗教・宗派にそったものが用意され、式場にセッティングされます。(無宗教なら、不要です)。
こういった道具類は、必要な一式がレンタル扱いです。
宗教用の道具って・・・どんなものがある?
いろいろあるけど・・・例えば、大きなおりんや焼香道具一式とかも、そうよね
遺影(亡くなった方の顔写真)
遺影は、故人の顔写真を大きく引き伸ばしたもので、祭壇中央に設置します。
遺族が選んだ写真を、遺影にふさわしく加工処理した上で専用の額縁に納めます。(火葬場へ持参した後、自宅に持ち帰ります)
- 約3万円(加工・額縁込み)
遺影は自分で前もって作っておくと、あわてなくていいし、かなり節約できます。
遺影写真のスマイル|2,000円・24時間仕上げ 遺影って、前もって準備していないと、どうしてもきちんとした写真が見つかりませんよね。 立派な写真じゃなくてもいいので、生前の人柄 …
式場スタッフ
式場スタッフについては、少なくとも進行役(司会)と、式場スタッフ(お世話係)の計2名は雇う必要があります。
式場の設営などは基本料金に入っていますが、その上で葬儀を円滑に行うためのスタッフです。
少なくとも進行役(司会)と、式場スタッフ(お世話係)の計2名は必要です。
- 式場スタッフ 3~5万円/名
親族がもっとも接する機会の多いスタッフですね
進行役は1名ですが、お世話係の式場スタッフについては、会葬者の人数、葬儀の規模、式場の広さによって必要人数は異なります。
また、極めて少人数のお葬式だと、お世話係が進行役を兼務するケースもありますが、適切な人数は葬儀社のアドバイスを受けて決めてください。
こんだけ、追加しなあかんのか・・・
これらはお葬式をする上で必要なサービスなので、おそらく追加することになります。
お葬式なしの直葬であれば、追加しなくていいものもあります。
希望によって追加するサービスの費用
こちらは、それぞれお葬式の希望や事情によって発生する追加サービスです。
必要のない方は、選ばなくていいものです。
式場使用料/湯灌(ゆかん)/バス・タクシー/祭壇供物(供花・供物など)/返礼品/後祭り祭壇(四十九日までの白木祭壇)
こちらについても、簡単に説明していきます。
式場使用料
葬儀会館でお葬式をするなら、必ず必要となりますが、自宅葬であれば、この式場代はかかりません。
葬儀会館ではなく、町内の自治会館などでお葬式をする場合、一室のみではなく全館を借り受けることになります。
カギの管理などは遺族が行い、使用料も自治会館管理者に支払います(実費)。
集会所や自治会館は、それぞれのルールに従って借りるようですね
湯灌(ゆかん)
湯灌とは、亡くなった方の最後のお風呂です。
身を清めてさっぱりとしてもらいます。
これは、絶対におすすめです。
眠っているような穏やかな表情になるんですよ
バス・タクシー
バス・タクシーは、火葬場への往復のための交通手段として必要になります。
全員が乗れるだけ自家用車があるのなら、借りる必要はありません。
借りる場合は、少人数であればタクシーを、そうでなければ貸切バスを選びます。
葬儀社と相談すれば、少しでも安くなる方法を教えてもらえます。
祭壇供物(お供え物)
祭壇供物は、お葬式の時に祭壇にお供えする果物・乾物などの盛り合わせや、供花のことです。
供物などは、当日に行う初七日後に親戚に分けて持ち帰ってもらえます。
あまったお花も花束にして持ち帰れますよ
返礼品
返礼品とは、お通夜やお葬式にお参りされた方すべてに渡す品物です(約500円/個)。
それとは別に、お香典をいただいた方に即日返しを行うなら、香典返しの品物も用意します。
ちなみに、これらの返礼品(供養品)は余った分はすべて返品可能なので、多めに注文しても無駄にはなりません。(少なくとも関西圏では、そんな感じです)
一応、返品については必ず葬儀社に確認しておきましょう。
返礼品に添える会葬礼状は買い取りなので、返品はできません
名前が印刷されてるしな・・・でも安いから
後祭り祭壇(あとまつり)
後祭り祭壇とは、お葬儀後に自宅にセットし、位牌や骨壺などを安置する白木の祭壇です。
仏式のお葬式をされた方のためのものですが、宗教が違っても、とりあえず自宅でお骨を安置する祭壇として、利用される方もあります。
以上が、基本プランにふくまれていないサービス類です。
追加サービスの費用については、葬儀社によって価格は異なりますが、それほど大きな違いはありません。
ただ、棺一つとってもランクがあり、ランクごとに価格は変わります。
例えば、基本プランにセットされている棺を、もう少し美しいものへグレードアップしたければ、差額分を支払えば、変更も可能です。
その分、葬儀費用は上がるけどね
市民葬(規格葬儀)費用の計算方法とは?
ここまで、基本プランにもともとセットされているサービスと、そうでないサービスとを確認してきました。
すると、次のように分類できます。
- 基本料金にふくまれているサービス
- お葬式に必要な追加サービス
- 希望による追加サービス
これに実費が加わります。
実費というのは、火葬料や宗教者への布施や飲食代などで、葬儀社の利益外の費用です。
・・・できたての精進料理が出てくる葬儀社もあるけど?
それは、多分、互助会などの大手冠婚葬祭会社ね
指定葬儀社は中小規模なので、自社にレストラン部門を持っているところは、まずありません。
葬儀会館内でいただくお料理も、ほとんどが外注(仕出し)です。
葬儀費用の計算方法
以上のことから、『かすみ』プランの葬儀費用の計算方法は、次のとおりです。
『かすみ』プランの価格19万6,800円は、①の部分の料金です。
このように、プラン価格は葬儀費用の基本部分にあたる料金、ということです。
これは、どこの葬儀社のどの葬儀プランにも共通することなので、覚えておいてください。
CMなどでは、安価な表示価格が目に飛び込んできますが、その価格だけでお葬式はできないんだ、ということを何となくご理解いただけたのではないかと思います。
ま、そんなもんだな。
そんなうまい話はないよな・・・
実際の葬儀費用はどのくらいかかる?
葬儀費用は、親族や会葬者の人数にもよってもかなり違ってきます。
ただ、おおよその目安としては、「表示価格×2=葬儀費用」と考えておくと、いいでしょう。
また、それ以上の金額が請求されることは、あまりないと思います。
神戸市の『かすみ』プランだと、
196,900×2=39万3,800円ですね。
同じプランを選んでも、ほんの数名の近親者のみの参列で、追加サービスも最小限であれば、飲食代やお布施などの実費を除けば、30万円程度に収まるのではないかと思います。
葬儀のタイプ別の相場や、葬儀費用の平均金額については、こちらの記事にまとめています。
将来のお葬式のことを考えるとき、同時に準備しておきたいのが葬儀費用です。 でも、いったいいくらぐらい準備しておけばいいのでしょうか? そんな時に参考にするのが、葬儀 …
まとめ
低価格なプランを選んだはずが、必要なサービスを追加していくうちに葬儀費用が思った以上にふくらんでしまった、ということはよくあります。
これは、すべての葬儀に共通することですが、葬儀プランの内容を見て、何がふくまれていて、何が足りないのかを知ることは、葬儀費用を計算する上で、とても重要です。
今回、参考にした神戸市の規格葬儀プランでも、他では通常ふくまれていない火葬料がセットされていました。
火葬料も自治体によって利用料金はさまざまです。
神戸市の火葬料は1万2,000円(市民)なので、これがふくまれているだけでも、ずいぶんお得・・・という言い方は妙ですが、助かります。
ちなみに、神戸市民でない場合の利用料金は3万6,000円で、これは実費です
このようなことも、前もって比較検討していればわかりますが、「ぶっつけ本番」では、わかりませんよね。
お葬式で後悔したり、予想外の出費に困ったりしないためには、表示されている葬儀価格のみで判断せず、そのプランの中身をしっかりと確認するということが大切です。
それが、葬儀費用の納得につながります。
そのためにも、早めに葬儀社を探して、仮見積りをつくり、いろいろと考える時間を持つことをおすすめします。
お墓がない方なら、その後の供養方法も併せて考えておくと、安心です。
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