こんにちは、三輪あや子です。
今の時代、お葬式に慣れている人というのは、ほとんどいません。
不慣れだからこそ、いろいろなトラブルが発生します。
今回は、格安葬儀のつもりで依頼したのに、終わってみれば高額請求だったという葬儀トラブルを参考に、いろいろと学んでみたいと思います。
葬儀トラブル「市民葬を依頼したら請求金額100万円だった」相談
国民生活センターに報告された葬儀トラブルの中から、前もってお葬式のことを考えていたにもかかわらず、トラブルになった例をご紹介いたします。
【葬儀の見積書がもらえず、請求も高額だと思う】
母親が亡くなったので、市民葬儀を行っているという葬儀社に葬儀の依頼をしたが、葬儀社が 見積書を持ってこなかった。
催促をすると、「後で請求書と一緒に渡す」と言われた。その後、斎 場があるのでこの葬儀社を選んだのに、斎場は 埃 ほこりまみれの倉庫のような部屋で、祭壇もボロボロ であった。
葬儀後に請求書が届いたが、市民葬儀で 100 万円を請求され高額だと思った。請求項 目についても不審に思ったので、葬儀社に説明を求めたが、納得のいく説明がない。
(2015年4月受付、60歳代、女性、自営業、東京都)
引用元: 国民生活センターHP
では、お母様が亡くなった後、葬儀社に連絡をしてからの流れを、確認してみます。
【トラブルの流れ】
母が亡くなったので、斎場(ホール)のある葬儀社をさがす。
市民葬を行っている葬儀社を選び連絡、依頼する
見積書を求めたが、もらえないまま葬儀準備へ入った
斎場(ホール)は狭く、祭壇も古びていた
葬儀後に届いた請求書は、項目に不審な点があり100万円の請求は高額だと思った
葬儀社の説明に納得がいかない
国民生活センターへ相談
だいたい、このような流れのようです。
・・・しっかりした人だよね
うん、だからこそ、惜しい、って感じがするね
まずは、お母様のご冥福をお祈りいたします。
2015年の相談受付となっているので、すでに解決済みのこととは思いますが、穏やかな日常を取り戻せているといいですね。
では、この相談内容から、
- 「なぜ、そうなったのか(原因)」
- 「どうすれば、よかったのか(対策)」
ということを、場面ごとに考えていきたいと思います。
市民葬儀を依頼した葬儀社から見積書がもらえなかった
相談内容によると、
母親が亡くなったので、市民葬儀 を行っているという葬儀社に葬儀の依頼をしたが、葬儀社が 見積書を持ってこなかった。
催促すると、「後で請求書と一緒に渡す」と言われた。
ということでした。
ここでのキーワードは「市民葬」と「見積書の催促」です。
市民葬って知ってる?
市民葬(規格葬儀)とは?
市民葬というのは、規格葬儀とも呼ばれるもので、
それぞれの自治体が住民のために、お葬式の基本プランを設定して、提案しているものです。
これは、行政が運営しているわけではなく、実際には街の葬儀屋さんが請け負うものです。
つまり、行政が企画したプランを街の葬儀屋さんに委託しているのが、市民葬です。
ただ、注意したいのが、
一見安価に思える市民葬儀ですが、そのプランの内容は、お葬式を行うために「最低限、これだけは必要です」というものをセットにしています。
例えば、この基本プランの中には、式場の費用などはふくまれていません。
式場というのは、それぞれの喪家ごとに選ぶ広さも場所も違うからです。
つまり、市民葬儀の提示価格は、葬儀費用の全体の一部にすぎない、ということです。
このように、市民葬儀であっても追加費用がいろいろと発生するため、最終的に葬儀費用がふくれあがったように感じる方が多いようです。
市民葬儀を選ぶ場合は、プランの内容を見る必要があります。
葬儀費用の見積書がもらえなかった件
今度は、見積書の件です。
相談内容を見ると、
依頼した葬儀社が 見積書を持ってこなかった。
催促すると、
「後で請求書と一緒に渡す」と言われた。
とありました。
この文面でしかわかりませんが、
電話で葬儀を依頼し、お母様の移送のためにやって来た葬儀担当者が、その場ですぐさま見積書を出すのは、難しいと思います。
出せるとすれば、市民葬儀プランの基本の値段だけ、でしょう。
それじゃ、意味ないよ
そだね
見積りというのは、ある程度、話し合いが進み、最終的に「このくらいになります」として提示できるものです。
先ほどの市民葬儀のプラン内容についてお話ししたように、
喪家側が追加サービスをあらかた決めてしまった段階でなら、葬儀社も簡単な見積りぐらいは出せたんじゃないかと考えます。
それでも、葬儀費用は参列者の人数によって大きく変化するので、お葬式が終わった後に、見積金額と大きく違ってしまった、ということも起こり得ます。
葬儀見積りは、あくまでも「目安」です。
それにしても、
相談者さんに見積書を催促され、それに対して、半ば投げやりに「請求書といっしょに持って行く」との葬儀社側の返答には・・・
なんや、それ!
・・・って思わず、言っちゃったよね
請求書と同時に提出された見積書って・・・それ、意味あるんですかね?
ただ、じゃっかん葬儀社側の肩を持つとしたら、単純に時間がなかったということだろうと思います。
亡くなった先から式場へ故人を移送をして、葬儀についての話し合いを行って、すぐさま納棺やら事務手続きやら、式場の準備、スタッフの手配やらをせねばなりません。
スタッフについては、
小さな葬儀屋さんは、ほぼすべて外注をしている所が多いです
仮に見積書を渡したとして、それを見た喪家の親族とまた
「これは高い」
「なぜ、こんな値段になるんだ」
「この金額ではなかったのか」
という質問に答えつつ、一から話し合いを行うとすれば・・・。
やっておかねばならない準備が停止したまま、時間ばかりが過ぎていきます。
すると、火葬場の予約さえできず、そのまま火葬炉の空きが埋まってしまい、そのために一日お葬式が延期、ということにもなりかねません。
ダメなの?
ダメじゃないけど、もう一泊分の料金は加算されるね、多分。
別のお葬式がすでに予定されていたら、それも無理だけど
それ以外の理由は・・・、
葬儀をキャンセルされる可能性を嫌った、ということもあると思います。
仮に、別の葬儀社に変更したとしても、価格的には、あまり変わらなかったと思います。
むしろ、時間の経過による手続きの遅れと別途移送料で、余計に費用がかさんだ可能性もあります。
ただ、やはり葬儀社側が保身に走らず、「だいたい、このぐらいかかりますよ」と、しっかりと話していれば、
相談者の女性(親族)が、ここまで悪感情を抱かずに済んだのだとは、感じました。
これが中規模以上の葬儀社であれば、説明する担当、準備を行う担当、というように人手があるため、じっくり説明して、粗見積りも出してもらえたんじゃないかと思います。
なぜ、人手が足りていない小さな葬儀屋さんと思ったかというと・・・。
この次のことから、そう推測しました。
葬儀会館の式場がボロボロだった件
もう一つ気になるポイントが、式場がボロかった、という点です。
相談内容によると、
斎場があるのでこの葬儀社を選んだのに、
斎場は 埃 (ほこり)まみれの倉庫のような部屋で、祭壇もボロボロ であった。
ということでした。
斎場というのは、この場合、葬儀会館の式場を指しています。
この式場がボロかどうかは、主観の問題です。
見る人によって感じ方が違うので、
なんとも言えないですね
ただ、「埃まみれの倉庫のよう」と表現されているので、式場管理は良くなかったのでしょう。
この文面から推測すると、
この葬儀屋さんは、身内だけで経営しているような小規模な葬儀社で、
その式場もおそらく、ほんの少し前までは倉庫として利用していたのを、なんとか式場に仕立てた、という感じだったのではないでしょうか。
自宅よりも葬儀会館を希望する方が多いですからね
話を戻すと、
「管理状態に難あり」だったとしても、これは葬儀社側に非があるわけではありません。
もともと、それで営業しているのです。
でもでも、掃除くらい、しとけや
どこも、ちゃんとしてるけどね。ただ、まあ・・・よく祭壇の上段とかね、うっすら埃かぶってたりするね~
ちゃんと、しろよ・・・
どうすれば、防げたのか?
どうすれば、こんなボロい葬儀会館をあてがわれずにすんだのでしょうか?
やはり、お母様が元気なうちに、終活の一環として、葬儀社の下調べをしておくべきでした。
葬儀会館や式場の様子などは、事前に調べてさえいれば、かんたんにわかることです。
家族が亡くなってから、あわただしく選んだ葬儀社だと、この相談者のように「現実とイメージとが違った」ということが、起こります。
葬儀社側は、別に何もかくしてはいないわけですから、これは選ぶ側の問題です。
まあ・・・そうなんだろうけど。
そんなボロい式場があるなんて思わないよ・・・
街の小さな葬儀屋さんの葬儀会館には、プレハブ小屋や、築60年以上の建て売り住宅の1階部分が式場、というケースもあります。
8畳の3分の1を幕で区切って倉庫にし、残りスペースに祭壇を組んで、「はい、これ式場」ってとこもあったよ
あやちゃん、司会したの?
したよ~。つま先立ちでなんとか屋根の下に入って。
どしゃぶりの中、他のスタッフ、みんな外で待機
なんで、そんなの受けたの?
社長に泣きつかれて。
でも、喪家の方には、過剰に喜んでもらえたから・・・
うん、まあ、いいとした
まさかの吊り橋効果!?
事前に葬儀社を調べる余裕がなかった場合、
中規模葬儀社で、広い駐車場完備の葬儀会館を持っているところを選ぶといいですよ。
中規模葬儀社になると、公式ホームページがあると思います。
手元にスマホがあるなら、ホームページで式場確認をすれば、イメージと大幅にかけ離れた式場をあてがわれることはないと思います。
とても小さな式場であったり、広い駐車場の片隅に建設したプレハブ式場であったとしても、事前に確認できて納得すれば、問題ないんだと思います。
葬儀費用が高額で納得がいかない件
国民生活センターのデータでも、葬儀トラブルの大半は、やはり費用に関することです。
この相談内容では、
葬儀後に請求書が届いたが、市民葬儀で 100 万円を請求され高額だと思った。
請求項 目についても不審に思ったので、葬儀社に説明を求めたが、納得のいく説明がない。
ということです。
まず、
市民葬儀と言っても、決して格安葬儀ではない、ということ。
そして、
追加サービスで料金が加算されるということ。
もう1点、注目したいのは、
追加料金の中には、
いつ、何に使用されたかわからないものが、加えられている、
ということです。
もちろん、葬儀社側は「何に使用した」ということは、きちんとわかっていますが、喪家(親族)側が、それを逐一チェックしていない品物です。
それって、何があるの?
何があるかというと、代表的なのが、亡くなった方の体を保護する特殊用品です。
納棺時や、その後も、故人の体の状態を整えるために使用します。
傷みを遅らせるためのドライアイスなどは、1回分で8千円~1万円ぐらいかかります。
納棺したときから、お葬式が終わるまでの時間にもよりますが、少なくとも1~2回はドライアイスを追加する必要があります。
ふ~ん、その追加ごとに1万円ほど、かかるってことか
ドライアイスもふくめて、
状態保護のためのものは、使うたびに親族に使用許可・追加許可を求めませんので、
場合によっては、請求書を見たときに
「こんなの頼んだ覚えはない!」と、葬儀社に対して不信感を覚えてしまいます。
しかも高額なので、捨て置くわけにはいきません。
そこで厳しく説明を求めても、葬儀社側は「それは、あのとき使いました」と言うだけです。
もちろん証拠などありませんから、ますます不審に思います。
そのほかにも、仏具、掛け軸などの宗教用具一式の使用料なども加えられていたりします。
「なんで!?もともと、そこに置いてあるもん違うん!? あんなもんにレンタル料、取るんか!?」
と、腹がたったりします。
でも、あれがなければ宗教儀式はできませんので、葬儀社は相当高額なものを買いそろえて、必要に応じて貸し出しているのです。
仏具の貸し出しについて
仏具も、そして祭壇も、
本来ならば、寺院から親族側が借り受けて、式場へ運び込むべき道具類ですが、それが困難な方のために、葬儀社側が用意してあるだけです。
困難だろ!?ふつー
地方に行くと、葬儀用の祭壇ごと寺院から借り受けて、式場へ運び込むケースもたまにあります。
都会では、まずありません
また、すばらしく巨大な木魚やおりんなど、せっせとお寺から運んだものの、うっかり足りない仏具があった場合、葬儀社側が、足りないものだけを貸し出す、ということもあります。
なので、葬儀社側の道具類を使う場合は、使用料が発生します。
そういった道具類なども、祭壇セット(葬儀プラン)の中にオールインワンパックとして設定されていることが多いです。
このように、請求書には「頼んだ覚えのない項目」が書き出されることは、間違いなくあります。
自分の目で使ったかどうか、確かめようがないものもふくまれていることを、利用者側は、知っておく必要があります。
100万円の葬儀費用が高いかどうかの評価
この100万円という葬儀費用が高いかどうかは、この相談内容からは情報が少なすぎて判断しかねます。
そこで、状況を仮定して評価してみました。
親族をふくめた参列者数が15名以内で、市民葬儀プランが30万円台以下だったとすると、100万円は、わりと高めかもしれません。
逆に、市民葬儀プランが30万円台以上で、参列者が親族をふくめ15名以上だった場合、100万円という葬儀費用は、普通~やや高めかな、という価格だと思います。
もし、この100万円という金額が、お布施をふくんでの葬儀費用だとすれば、むしろ安価に抑えた金額だといえるのではないでしょうか。
仮に、身内のみの家族葬で、僧侶など聖職者を呼ばない無宗教形式であるなら、この100万円は高額すぎると思います。
どうすれば、葬儀費用のトラブルを防ぐことができたのか?
では、この相談者の方は、どうすればトラブルを避けることができたのでしょうか?
仮にわたしがこの方にアドバイスするとすれば、「早めに葬儀社を選んでおいたほうがいいですよ」ということを進言します。
もちろん、この相談者の方は何もしていなかったわけではないですよね。
高齢のお母様のことを意識してるからこそ、「市民葬儀」があること、それを行う指定業者(葬儀社)があって、そこに依頼すれば、市民葬儀が行えるということを、情報として得ていました。
そこで、もう一歩、なんだよー
うん、惜しかったよね
もう一歩進んで、あらかじめ葬儀社の候補を選んでおけば、なお良かったと思います。
時間があるときにその葬儀社を訪問し、会館内を見学できていれば、確実に仮見積りも入手できますし、適切な情報を得ることができたと思います。
その時点で、対応してくれたスタッフや説明を担当した係などの態度で、ある程度「誠実な葬儀社」か「不誠実な葬儀社」か判断できたと思います。
相性もあると思いますしね
そうやって「良さそうな」葬儀社を見つけ、仮見積りまで出して、納得した上で生前契約をしていれば、おそらく今回のようなトラブルはなかったと考えます。
また、そこまでの時間がなかったとしても、お母様が体調をくずされた時点で、行動していれば、もう少し葬儀社と相談や交渉する心の余裕もあったのではないかと思います。
病院からの葬儀社選びについては、こちらの記事にくわしく書いていますので、参考にしてみてください。
いずれにしても高齢の親がいる場合、
葬儀社を選ぶ情報集めは、早めにしておくことを、おすすめします。
まとめ
お葬式のトラブルの原因は、葬儀に関する知識不足からの誤解であったり、認識の違いが大半のようです。
今回の「市民葬(規格葬儀)」も、格安イメージだけが先行して誤解を生みやすいため、採り上げてみましたが、参考になりましたでしょうか。
また、葬儀費用というものは、参列者(親族・一般会葬者)の人数しだいで変動するので、フタを開けてみないと、わからないという事情もあって、亡くなってから依頼した葬儀社では見積りを出しにくいようです。
時間的な余裕がないこともあります。
ただ、何も起こっていない平常時なら、葬儀会館の見学もできますし、葬儀プランの説明や、仮見積りなども出してもらえます。
家や車を購入するときに、いろいろと下調べをするのと同じように、葬儀社とプランについては、比較検討して、選んでほしいと思います。
トラブルを避ける一番の対策は、事前の下調べ、ですよ。
一択!これに尽きます!