- 『黒のスエードの靴ってお葬式にはOK?』
- 『スエードは黒でもダメってマナー本に書かれてたような・・・』
- 『ダメでもこれしかないんだけど・・・』
こんにちは、三輪あや子です
突然の訃報に、あわてて喪服の準備をし、いざ靴を探してみると黒のスエードの靴しかなかった場合、お葬式に履いて行っても問題ないのでしょうか?
冷たい視線を浴びないでしょうか・・・
今回は、お葬式にスエードの靴を履くのはマナー違反になるのか、ならないのか?
そんな悩ましいスエードの靴の扱いについて、お話ししたいと思います。
お葬式の靴にスエードは問題なし!?
お葬式に参列する際、黒のスエードの靴しかない場合は、それを履いて行っても問題ありません。
ただし、留め具の金属が目立つものや、派手な飾りがついた靴などは男女ともにNGです。
この点は、葬儀用の靴に共通するマナーですね
とはいえ、スエードの靴は素材的にはカジュアルに属するので、あくまでも礼装用の靴を持っていない場合のやむを得ない選択肢だと、心得ておきましょう。
なぜスエードの靴がお葬式にはNGと言われるのか?
そもそも、なぜスエードの靴がお葬式にふさわしくない、と言われるのでしょうか?
主な理由は、宗教の教えによるものです。
たとえば、仏教のタブーである五戒の一つ「不殺生戒」は、「生きものを殺さず」というものです。
五戒はすべての仏教徒が守るべきルールなので、動物を殺し、なめした革を身にまとうなど、あってはならないことです。
神道は、奈良時代から平安時代の前半あたりまでは普通に狩猟して得た鳥獣の肉類を食したり、奉納していたようです。
それが平安時代の半ばごろから清浄性を突き詰め、神聖性を極めようとした結果、当時の天皇や神官(摂関貴族)たちは肉類を避けるようになり、やがて周辺での狩猟も禁じるようになりました。
それが次第に、血と動物の肉(死)を穢れと見なすように変化していったという経緯があります。
天皇は・・・食べたくても、出してもらわれへんかったんやろナ・・・
伝統的な古い神社では「御狩祭」「神狩神事」「御鹿祭」など、今でも獣肉が捧げられる神事が伝えられていますよ
こういった理由から、特に宗教と密接にかかわる葬儀では、動物の皮であるスエードを張った靴は「お葬式にはふさわしくない」と見なされたわけです。
「五戒」とは、すべての仏教徒が日常生活を送る上で守らなければならない五つのルールです。
- 不殺生戒(みだりに生き物を殺さない)
- 不偸盗戒(人の物を盗まない)
- 不妄語戒(ウソをつかない)
- 不邪淫戒(配偶者以外との不道徳な性交をしない)
- 不飲酒戒(お酒を飲まない)
ちなみに、僧侶は肉食厳禁ということなのですが、実は3種の浄肉については食べてもOKなんだそうです(抜け穴はちゃんとあるんです)。
- 殺すところを見ていない肉
- 自分のために殺したと聞いていない肉
- 自分のために殺したのではないことが明白な肉
あ~、だから京都の焼き肉店じゃ、やたら坊さんを見かけるんだな
僧侶人口多いからね、どこでもいるよ。酒場にも・・・
ところで、戒律の「戒」と「律」は別物なんだそうです。
律・・・「△△してはいけない」という法律の部分(罰則あり)
戒・・・「△△したほうがいいですよ」という在家信者心得の部分(罰則なし)
律は、修行中のお坊さんたちが守るべき規則。
戒はルールでありながら暮らしのアドバイス、って感じですね
在家信者の心がけ「十善」のほうには不飲酒戒は消えてるし、飲んでもかまへんらしい!
お葬式の靴がスエードでも問題ないワケとは?
宗教上の理由からすれば、お葬式に履いていく靴がスエードなのは大いに問題ありなのですが、現在は特に問題視されません。
その理由は、弔事の正装である喪服に洋装が採り入れられるようになったことにあります。
- 男性 モーニングコート・ブラックスーツ+黒の革靴
- 女性 洋服の喪服+黒の革靴
女性も最近では和服よりも洋喪服を選ぶ方が増え、その足もとはフォーマルな黒の革靴です。
革靴は言うまでもなく、動物の皮です。
このように、お葬式の正装として革靴が用いられている時点で、宗教上の理由でスエードをNGとする根拠は、すでにありません。
そのため、スエードの靴を葬儀に履いて行ったとしても問題ない、ということになります。
お葬式にスエード靴は問題ないけどマナー違反?
さて、宗教的な理由では問題ないスエードの靴ですが、お葬式のマナーとしては、どうなのでしょうか?
すでに述べましたが、スエードという素材がカジュアル系に属することから、正装に合わせる靴としては、マナーからは外れる選択です。
お葬式の正装である喪服に合わせる靴は、やはりフォーマルなものであるべきです。
フォーマルな革靴とは、メンズ・レディースともに表革を使用した黒の革靴です。
スエードは、起毛させた裏革を使った靴であり、いかなるフォーマルシーンにもふさわしいとは言えません。
そのため、お葬式にスエードの靴で参列するというのは、マナー的にはNGであり、やむを得ない場合の、やむを得ない選択ということです。
スエードよりNG!?もっとお葬式に履いてはダメな靴とは?
黒のスエード靴であれば「目立たない」という点で、マナー的にはNGであっても見逃されますが、そうでない靴もあります。
お葬式に「ふさわしくない」とされる靴は数多くありますが、その中でも次のものは、やむを得ない事情があったとしても、履いて行ってはダメです。
- × エナメルの靴(光る靴は葬儀には不向き)
- × サンダル(つま先・かかとが見える靴はNG)
- × ブーツ(ブーツは本来、外での作業靴です
黒一色の靴であっても、これら3つは完全にマナー違反な上、悪目立ちして、いらぬひんしゅくを買うことになるため、要注意です。
女性の場合、ハイヒールも避けましょう。
ハイヒールはたとえ黒一色でも弔事の礼装にはNGなんですよ。
妙に目立ってチラ見されちゃうので、やめておきましょう
【ケース・バイ・ケース】時には常識どおりでないこともある・・・
一般常識やマナーばかりが正義ではなく、時と場合によっては別次元の常識やマナーに遭遇することもあります。
以前、ある高級クラブのオーナーがお亡くなりになり、その通夜・葬儀には大勢の関係者が参列しました。
喪服なのに隔絶した艶やかさの美男美女が集った式場は、ハイヒールの方々も多く、その堂々としたたたずまいは、マナーがどうたらなんぞ、吹っ飛んでどうでもよくなるほどの別世界でした。
亡くなったオーナーが満足気にうなずいてそうな、そんなお葬式でした。
このようにハイヒールの方が大勢いる式場では、常識からの違和感など薄れますが、通常のお葬式で自分だけがハイヒールだと逆に悪目立ちしてしまう、ということですね。
その他、故人の遺志で「こういう服装で」というドレスコードなどがあれば、ためらわずに従いましょう。
そうすることが、供養にもなります。
そのほか、美しさで印象に残ったお葬式の一つに、呉服関連の社長のお葬式があります。
葬儀に参列された女性のほとんどが色無地・喪帯で、豪勢な花祭壇と対を成すような美しさだった記憶があります。
和服の喪服は、黒喪服が正装で、紋付き色無地は準礼装です。
紋なし色無地は略礼装になります
お葬式にふさわしい靴とは?
では、お葬式にふさわしい靴とは、どんな靴なのでしょうか?
男女で区別すると、以下のとおりです。
【女性】
- 素材は革か布張りの黒のパンプス
- ヒールの高さは3~5㎝程度
【男性】
- 素材は黒の革靴(表革)
- ストレートチップ(つま先部分に横一本の切り替え線がある靴)
女性の靴選びのポイント
女性の靴は種類もデザインもいろいろとありますが、その中からプレーンな黒のパンプスを選べば間違いありません。
弔事のフォーマル用としては、シンプルな黒革のパンプスです。
- 革靴
- 布製
日本の弔事においては、革靴よりも布製のパンプスのほうが格上ですが、基本的にどちらでもOKです。
なお、リボンなどの飾りがついていても黒一色に統一されていれば、特に問題ありません。
留め具などの金具については、目立たなければ大丈夫です(許容範囲内)。
靴の素材は、本革でなくても本革風に見えれば十分なので、合成皮革やポリエステル素材など安価なものでもかまいません。
セールなどで見つけた時に、一足買っておくといいですよ
ヒールの高さについても、葬儀の規模によっては1~2時間立ちっぱなしの可能性もあるので、立っていても疲れない高さ、足をもぞもぞさせない高さを選ぶようにしてください。
高齢者に席を優先していくと、若い方は壁に並んで立つケースもありますからね
非常にエレガントな布張りのパンプスを購入した時のことです。
靴底も飴色の美麗なレザーソールで、思わずうっとりと撫でさすったものです。
が、良かったのはそこまででした。
おろしたての布張りパンプスで仕事に出向き、ピカピカのロビーに足を踏み入れた瞬間、ツルッとすべりかけてびっくり!
急に靴底と床面との摩擦が消えたようでした。
敷き詰められたカーペットの上ではさらにひどく、常に転倒の危険と隣り合わせ状態。
結局、仕事を終えて車に乗り込むまで、大地を踏みしめる脚力強化に努め、泣きそうにりながら耐え忍ぶ一日となりました。
床との接着面が少ない女性のパンプスなどは、伝統的なレザーソールよりも、すべらないラバーソールのほうが絶対に安全だと、痛感しました。
靴屋さんでは靴がすべるような感じはなかったのですが・・・
この日をもって、このエレガントな布張りパンプスは封印されることになりました(キケンすぎて履けません!)。
伝統のレザーソールはヨーロッパのボコボコのレンガ道を闊歩する用なんですね・・・日本にそんな道ないしね
わしのホッペをピタピタやってくれた、あの靴か・・・ざまぁ!
男性の靴選びのポイント
メンズのフォーマルシューズの筆頭は「ストレートチップ」という、つま先部分に横線が入っている型の靴です。
また、紐を通す革が甲の内側になっている「内羽根式」と、外側にある「外羽根式」とがありますが、内羽根式のほうが格上です。
ストレートチップのようなフォーマルな靴がない場合、できるだけプレーンな黒の革靴を選びましょう。
- 黒の革靴
- 靴紐のある靴
- 金具が目立たない
この3つの条件をクリアしていれば、お葬式用の靴として問題ありません。
愛用して少しくたびれていても、ホコリをぬぐって靴磨きで磨けば、礼を失することはありませんが、やはり葬儀用の一足は準備しておいたほうがいいでしょう。
靴紐のあるほうがフォーマルに近く、靴紐のないタイプだとカジュアルよりになります。
【男性の靴のフォーマル度】
- ★4~5
- 靴紐のある黒の革靴
[例]ストレートチップ内羽根式・外羽根式 - ★3~4
- 靴紐のある黒の革靴
プツプツと穴飾りがつま先や全面にほどこされたタイプ - ★2
- 靴紐がない黒の革靴
ベルトタイプや、靴のアッパーにぐるりと縫い目がほどこされているタイプ
- ★1
- 靴紐がない黒の革靴
[例]ローファー。靴紐がなく、着脱がかんたんなスリップオンタイプ
お店の人に「冠婚葬祭用の靴を探してる」と言えば、選んでもらえますよ
男女いずれの靴も、お葬式に履いて行くのであれば、靴の内側・靴底ともに黒色のものが、よりふさわしく、マナーにかなった靴と言えるでしょう。
お葬式に履いていく靴については、こちらの記事も参考にしてください。
『喪服にローファーはマナー違反?』 『お葬式の靴ってリボンとか付いてたらダメ?』 社会人になるとお付き合いの関係上、お葬式に参列する機会も増えると思います。 &nb …
まとめ
ちょくちょくお葬式に履いて行く靴にスエードはダメで、その理由が宗教的なものであると説かれますが、洋喪服で革靴を履き、葬儀に参列している時点で、スエードを否定するのは矛盾します。
本当の理由は、スエードがカジュアル素材であり、冠婚葬祭をはじめ、フォーマルシーンには不向きだからです。
ただ、突然のお葬式でやむを得ない場合にのみ、「黒のスエード靴」であればマナーからは外れるものの許容範囲とされます。
実際、葬儀場では全員が黒の喪服を着用し、同じように黒い靴を履いているので、光を吸収するスエードの黒は、じゃっかん黒すぎる感じはするものの、それだけです。
靴の素材のことなど気にする方は少ないでしょう。
とはいえ、もしもの時のために一足はきちんとした葬式用の靴を持っておくことを、おすすめします。
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